01.2019

H. MOSER & CIE.(H. モーザー):過ぎゆく時に耳を傾けて

エレガンスをモットーとし、サインの代わりにミニマリズムを採用した H. モーザーは、スイス・アルプ・ウォッチ コンセプト ブラックではこうした傾向をさらに強く打ち出しています。このマニュファクチュールは、コンセプト モデルのダイアルからロゴとインデックスを取り去ったのち、今度は針のない時計を発表します。時を表示せずに、時を知らせるのです。光沢仕上げブラック ダイアルの 6 時位置には、ミニッツ フライング トゥールビヨンが搭載されています。それ以外には何もありません。時刻を知るには、耳を澄ます必要があります。電気が普及する以前の時代にそうしていたように。というのも、夜になって物が見えなくなると、昔の人々はミニッツリピーターを使って時刻を知ったからです。こうした非常に権威のある時計製造の伝統に喜んで賛意を呈しながら、H. モーザーはコントラストを楽しんでいます。ミニッツリピーターとトゥールビヨンを角形ケースに組み込んだ究極のミニマリストの作品でありながら、一見するとスマートウォッチのようにも見えるからです。

コーナーを丸くした現代的な角形デザインのケースの内部に、H. モーザーは変わった形のムーブメントを搭載しました。ここには、フライング トゥールビヨンに加え、一般にマニュファクチュールにとって非常に製造困難な複雑機構の一つとされている、特殊形状のチャイムを採用したミニッツリピーターが組み込まれています。シャフハウゼンに拠点を置くマニュファクチュールによるスイス・アルプ・ウォッチ コンセプト ブラックは、通知を表示しながら時間を浪費させる「スマート」機器とは違って、時間を測定して音で時を告げ知らせるという本来の役割を時計に取り戻しながら、伝統的な時計製造の根本に立ち返っています。H. モーザーならではのエレガンスが隅々までしみ込んだ、機械式時計の芸術宣言であるかのように。時刻あわせはリュウズで調整を行いますが、このシステムも控えめです。リュウズに刻まれたマークにより、リュウズを引き出したときだけ現れる目盛を使って時刻を調整することができ、12 のインデックスはそれぞれ 5 分を表わします。このモデルのミニマリストの精神に沿った、巧みなシステムです。

スイス・アルプ・ウォッチ コンセプト ブラックは、手巻き HMC 901 キャリバーによって駆動します。2005 年以降で 13 番目となる自社製ムーブメントを設計するにあたり、H. モーザーはミニッツリピーターのエキスパート、MHC 社(Manufactures Hautes Complications SA)にノウハウを求めました。両社が協力することで、完璧なハーモニーと力強い音を両立させることに成功し、驚くべき快挙を達成しました。トゥールビヨン(それ自体、時計製造においては稀な快挙)とミニッツリピーターとを特殊形状のキャリバーに組み込んだ HMC 901 は、真の宝石箱とも呼ぶべきムーブメントです。このムーブメントは、スイス・アルプ・ウォッチ コンセプト光沢仕上げブラックの角形ケースに収められ、調律が非常に困難な 2 つの特殊形状のチャイムが備わっています。

角度を設けた 2 つのチャイムが奏でる 1 時間、1/4 時間、分の音を増幅させるために、ケースを大幅に加工し直し、十分なスペースの共鳴室を得るために中央部分を完全に空洞にする必要がありました。H. モーザーは完璧な熟練技を駆使しながら、振幅、一定の長さ、澄み切った音色を兼備した、美しい音を実現することに成功しました。

6 時位置の目を惹くミニッツ フライング トゥールビヨンは、スケルトン加工を施したブリッジ越しに眺めることができ、精度と計時性能を高めるためにボールベアリングに取り付けられています。明らかに現代的で時代の先端を行くこのトゥールビヨンは、完全に無駄を削ぎ落したダイアルにおいて、無重力状態で浮いているように見えます。しかも、わざとスマートウォッチに似せることで、H. モーザーは一種の賢い目くばせを楽しんでいます。

疑う余地のない H. モーザースタイルの高級時計です。 

技術仕様 – スイス・アルプ・ウォッチ コンセプト ブラック